楽天市場の近況とこれからの方向性
2020年8月27日、楽天市場の初めての試みである「楽天オンラインEXPO 2020」が開催されました。これまで定期的に大きな会場を借りてリアルで開催されていた「楽天EXPO」が、コロナウィルス拡大の影響を考慮して、はじめてオンラインで開催されたイベントです。コンテンツはこれまでのリアルイベントと遜色なく、ゲストスピーカーの講演や、楽天市場経営陣の戦略共有会が、ネット動画配信を通じて放映されました。今回のオンラインEXPOでは2020年度第2四半期に発表された最新決算資料をもとに近況の振り返り、及びこれからの楽天市場の方向性について詳細な報告がありました。
今回はオンラインEXPOで発表された内容の振り返りと、楽天市場の今後の方向性について見ていきましょう。
コロナ禍を背景にEコマース事業が好調
コロナウィルス拡大を背景にEC業界全体が好調に推移する中、楽天市場の2020年第2クオーターの売上も好調で、ショッピング、Eコマースの流通総額は昨年同期比で+48.1%と大きく成長しました。売上増加に繋がった主な理由は、リアル店舗で買い物をするユーザーが多く楽天市場へ流入してきたことで、新規購入数は前年同期比で+63.1%と大幅に増加。さらに1年以上購入が無かった復活顧客数が+80.9%と2倍近くも増加したことが大きく影響しました。これらの要因を背景に、2020年6月に開催された楽天スーパーSALEの流通総額は過去最高を記録しました。
参照)
ショッピングEコマース=楽天市場+ 1st パーティー(ファッション, ブックス, Rakuten24 (ダイレクト), ネットスーパー+ オープンEC(Rebates, チェックアウト) + ラクマ
購買行動のニューノーマル
上記の数字を見ると、コロナウィルスの影響で、これまでネットショップを利用したことがないユーザーが数多く楽天市場へ流入してきていることが分かります。これらの新規ユーザーはネットでの買い物経験を通じて直ぐに商品が届くやクレジットカード決済をはじめとするキャッシュレスの手軽さを知る切っ掛けに恵まれました。一度このメリットを感じた人々はECニューノーマルとしてネットショップでの購買行動が習慣としてインプットされてしまったため、コロナが収束した後もネットショップを利用し続ける人の数は増加するでしょう。実際、楽天市場でもコロナ禍が落ち着くまでのしばらくの間は、昨年対比+30%〜40%で売上が成長すると予測しています。
また一部の店舗からの反発により大きな話題となった「3,980円以上で送料無料」プログラムも楽天市場の流通総額増加に影響を与えています。すでにこの送料ライン(39ショップ)を導入した店舗の割合は楽天市場出店店舗の約80%を占め、導入していないショップと比較して約20ポイントも売上が成長したという結果が出ています。コロナの影響で新規がユーザーECへ多く流れてきたタイミングで、3,980円以上送料無料という明確で、かつ、ユーザーファーストの取り組みが奏功したと考えられます。
【参考】
モバイルと物流
楽天市場が全社を挙げて取り組んでいる一大プロジェクトが「楽天モバイル」です。サービス開始時期延期などで様々な物議を醸し出しましたが、基地局は順調に増加しており、サービス開始からわずか3ヶ月で契約申込数は100万回線と、急速に新規ユーザーを獲得しています。楽天モバイルの最大のメリットは圧倒的な低価格戦略。これまで既存の通信業者がハードウェアで賄っていた通信環境を、楽天モバイルはソフトウェアで制御。結果、大きなコスト削減に繋がり、低価格を実現しています。2020年秋には5Gにも対応する予定となっており、新しい通信サービスの普及を切っ掛けに更に多くのユーザーを獲得すると考えられます。ちなみに楽天モバイルユーザーの約47%が楽天市場で買い物をしており、楽天モバイルのユーザー増加に伴って、楽天市場の流通総額も自然と伸びていくことが期待できます。
もうひとつの楽天市場の主な戦略は物流網の強化です。急激なEC需要増加の背景で問題となってくるのが物流問題です。このままECが成長していくことで日本の物流自体がパンクすることは確実視されており、そういった将来の物流に対する不安に対して、自前の物流拠点を増加することによってサービスの向上と配送の効率化を目指します。当面は関東圏と関西圏での物流拠点拡大に注力していくようで、将来的には全国主要都市への拡大が期待されます。楽天市場の物流拠点が拡大するにつれ、楽天市場へ出店している店舗はすでにAmazonでは実現できている365日毎日出荷、低コストでの配送、配送に関わる人件費削減などが実現します。
モバイルと物流は楽天市場の成長には欠かせない切り札として、今後、急速にサービスレベルが向上していくとが期待されます。
これからも有望なEC
現在の日本の家計消費は約200兆円と言われており、それに対してECの市場規模はわずか19兆円。EC化率はたったの6.3%に留まっていることを加味すると、マーケット自体の伸びしろもまだまだ大きいと考えられます。さらにECはすでにモバイルの時代へとシフトしており、ECユーザーの過半数以上がスマホからのユーザーです。このスマホ比率(モバイル比率)は、2020年秋頃から本格的にサービスが開始される5Gの登場によって、その勢いに更に拍車が掛かると思われます。
これだけの成長要素が複数重なることは数十年に一度ぐらいの「とても大きな契機」です。これから起こる革命に乗り遅れないよう全身全霊でECに打ち込みましょう!
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