ソフトバンク包囲網
つい先日、Yahoo!ショッピングの親会社であるソフトバンクグループが四半期決算を発表しました。投資先であるアメリカの企業経営が悪化し、結果は約7,000億円の赤字と、過去最大級の赤字を計上しました。しかし、これだけの赤字を出しながらもソフトバンクグループは攻めの姿勢を貫いています。
傘下事業であるキャッシュレス決済「PayPay」普及のための大型キャンペーン、新規プレミアムモールPayPayモール(Yahoo!ショッピングのプレミアム店舗モール)のオープン、zozoの買収、そして四半期決算報告直後には将来的に買収を視野に入れたLINEとの業務提携など、非常に興味深い戦略を次々に実施しています。果たして、Yahoo!ショッピングを含めたソフトバンクグループは、今後、どのようになっていくのでしょうか?
出店手数料無料化に始まる独自の戦略
Yahoo!ショッピングの独自性は、2013年の出店手及び売上手数料の無料化まで遡ります。当時、ECモールへ出店するためには固定の月額手数料と、ジャンルや売上げ規模に応じたロイヤリティーを支払うことが一般的でした。
そんなEC業界の常識をYahoo!ショッピングは覆します。決済手数料やポイント原資となる1%以外の費用は原則として無料にしたのです。この影響でYahoo!ショッピングへの出店店舗数と取扱商品点数は短期間で急激に増加しました。Yahoo!ショッピング自体の知名度も向上し、それまで楽天市場で圧倒的な売上げを誇っていたパワーセラーたちもYahoo!ショッピングへ次々と出店し、新規マーケット開拓へ意識を向け始めていったのです。
ソフトバンクユーザーとの連携
その後、しばらく紆余曲折はあったものの、「5の付く日」キャンペーンを開始し、特定の日には通常よりもポイント還元率が高くなる定期キャンペーンを実施します。この企画は2019年11月現在も続いており、今となってはYahoo!ショッピングの流通が一気に上がるほど、消費者の間に浸透してきました。
さらに親会社であるソフトバンクとの連携により、ソフトバンクの携帯電話を契約しているユーザーがYahoo!ショッピングで買い物をした場合、いつでもポイント10倍を還元(付与ポイントには上限あり)するなどの思い切った戦略によって一気に新規ユーザーを増やしてきました。
自前キャッシュレス決済と新規モール
Yahoo!が始めたキャッシュレスサービスの「PayPay」は、サービス開始間もないサービスにも関わらず、現在では1,500万人以上のユーザーが利用しています。ユーザー増加率は、数あるソフトバンクグループの事業の中でも最速レベルです。増税後の政府の施策「キャッシュレス消費者還元」の追い風を受け、今後も急速にユーザー数が増加していくことが予測されます。そして、PayPayのユーザー数増加の背景で順調に売上げを伸ばしているのがPayPayモールです。
2019年11月に本格指導したPayPayモールですが、出店店舗の売上げは好調に推移しており、年末商戦に向けてさらに勢いが増すと予想できます。現在のところ、PayPayモールへの出店は一部の店舗に限られていますが、キャッスレス決済とモールとの融合が、今後EC業界にどんな影響を与えるのか?その方向性に注目です。
関連企業の買収と業務提携
ソフトバンクグループは、既存ビジネスに強いシナジーをもたらす関連企業の買収、業務提携に積極的です。zozoを買収したニュースは記憶に新しいですが、つい先日、矢継ぎ早にLINEとの業務提携を発表しました。ファッションジャンルでECに新風を吹き込んだzozoは、間違いなくYahoo!ショッピングのファッションジャンルを牽引する存在になるだろうし、現在、老若男女問わず、日本人の通信ツールとして広く普及したLINEは、情報伝達力の飛躍的な向上をもたらすことになるでしょう。
ECモール発展のために不可欠だと言えるキャリア、SNS、決済、さらには今後は独自物流にも注力していくとのことで、これらの4本柱を着々と強化するYahoo!の狙いは、ズバリ「日本一のECモール」かもしれません。ライバルである楽天市場、アマゾンが、今後、どんな戦略で攻めてくるのか?ここ数年のうちにEC業界が大きく変化していくことは間違いないと言えます。
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