2024年問題に備える

Date:2023.06.04
目次

※店舗が迫られる決断
※消費者ニーズの変化
※店舗が生き残る道
※常に時流の変化に対応できる体制を構築する

2024年4月1日以降、配送業者をはじめとする自動車運転業務の時間外労働時間の上限が制限されるようになります。配送ドライバーの慢性的人手不足の改善、雇用条件改善を目的とした取り組みですが、配送業務に依存するEC業界では、運賃の上昇、出荷個数の制限など、様々な影響を受けることが懸念されています。

 

 

今後も継続的にネットショップを運営していくためには、これらの問題を乗り越えられる運営体の構築が必要です。

 

 

今回は、「2024年問題に備える」と題しまして、どのような取り組みを実践していけば良いかを考えてみましょう。

 

 

 

※店舗が迫られる決断

配送業界の雇用条件改善をはじめ、ガソリン価格や光熱費の高騰が相次ぐ昨今、現状よりも運賃が上昇することは確実と言えます。配送料が上昇すると、ネットショップとしては「値上げした分、送料を上乗せして売価に転嫁するか?」「サービスを優先して、値上げした余分なコストを店舗で吸収するか?」のいずれかの選択が迫られます。

 

 

運賃が値上げした分を販売価格に上乗せすることは簡単ですが、商品価格に対して送料負担が大きくなると、客離れによる売上減少のリスクが懸念されます。一方、送料を据え置きにすること、店舗の利益圧縮に繋がります。

 

 

運賃値上げ幅の条件は、出荷ボリュームやエリアによって多少の異なりますが、全体的に値上がりすることは、どのお店にとっても条件は同じです。そんな中で、ギリギリまで送料を据え置きで運営するお店と、早々に送料を値上げするお店との間で格差が発生し、熾烈なユーザー争奪戦が起こります。

 

 

送料値上げのタイミング、値上げ幅など、競合店の出方を見ながら慎重に考える必要があります。

 

 

 

※消費者ニーズの変化

たとえ、配送業者が運賃を値上げしても、消費者にとっては関係のない事です。より良い条件で、早く商品を届けてくれるお店が支持される事は、2024年4月以降も変わる事はありません。

 

 

Amazonが翌日配送に注力して以降、大きく業績を伸ばしました。やがて、送料無料と翌日配送サービスは消費者の間で浸透し、当たり前のサービスとして捉えられるようになりました。楽天市場やYahoo!ショッピングなど、その他の大手ECモールも、そんな消費者のニーズに応えようと、自前で物流拠点を設置したり、大手配送業者と協力して配送サービスの向上に力を注いでいます。

 

 

一度、良いサービスに慣れた消費者に対して、世の中の変化がどうあれ、今よりも条件の悪いサービスは受け入れられません。送料の値上げを検討する上で、その事が最大のネックになります。Amazonは何としてでも2024年問題を乗り越えて今のサービスを維持しようとしてくるでしょうし、他のECモールも確実に追従してくるでしょう。いったん消費者が慣れてしまった良いサービスを劣化させた上で売上を維持する事は極めて困難です。それに見合うだけの新たなサービスを提案できるのであれば問題ないですが、簡単にはそんなサービスは出てきません。まして、ネットショップを利用するユーザー満足度に最も影響を与える配送サービスについては、仮に送料値上げなどでサービス内容が劣化したとしても、その範囲は最小限に抑える必要があるのです。

 

 

※店舗が生き残る道

送料の値上げ幅を最小限に抑える。もしくは、送料値上げのタイミングをギリギリまで引っ張ることが、売上の維持および成長に繋がる前提条件になるのであれば、店舗側は利益体質を改善してコストアップした分を吸収できる体制を整える必要があります。利益体質改善のための取り組みとして考えられる事は、以下のような事があります。

 

 

・PB商品の開発

どの店舗でも購入できる商品は、価格競争が発生するため、概して利益率が低い商品が多いです。一方、他社では購入できないオリジナルのPB商品は競争も少なく、利益が確保し易い特徴があります。PB商品は型番商品などの仕入れ商材と比較して生産ロットが大きかったり、ユーザーに認知されるまでに時間とコストが掛かりますが、PB商品でも売れる販売力を身に付けなければ、利益率を改善する事はできません。いずれいつかは挑戦すべき戦略と捉え、前向きに検討してみましょう。

 

 

 

・作業フローの改善

長年、店舗運営を行っていると、今はすでに必要なくなった作業や、時代の流れの中でユーザーのニーズからズレてしまったサービスを、何の疑いもなく惰性で継続している場合があります。

 

 

日常業務の中で、それらの変化に気付くことは容易ではありませんが、定期的に業務内容を見直して、無駄な作業は排除する習慣を身に付けましょう。これらの習慣を継続することで生産性は向上し、結果、時間とコストの節約に繋がります。

 

 

・設備への先行投資

投資金額が大きくなれば大きくなるほど導入に尻込みしてしまいますが、生産性を向上させるための機器やシステムは積極的に導入を検討していきましょう。これらの設備投資は過剰人員や余分な残業を最小化する上で重要な考え方です。

 

 

売上アップに直結する費用は積極的に予算は割くけれど、生産性に影響を及ぼす設備への投資は後回しになりがちです。攻め(売上アップに対して)の投資と、守り(生産性向上のため)の投資は、バランス良く行うように意識して下さい。

 

 

・外部物流を活用する

全ての商品を自社倉庫から出荷しているのであれば、売れ筋商品や、サイズが小さく保管料や送料が抑えられる商品を外部物流サービスを利用する事で、結果としてはトータルコストが抑えられる事もあります。発送に掛かる人件費、運賃、梱包資材費、倉庫代、光熱費など、総合的に試算して、自社からの出荷と外部からの出荷とどちらがコストが抑えられるかを確認してみましょう。

 

 

 

※常に時流の変化に対応できる体制を構築する

今回は運賃値上げに関する対策としていくつか取組みをご紹介致しましたが、健全な店舗運営を継続していくためには、時流の変化に素早く対応できる体制づくりが重要です。直近では原材料の高騰による値上げラッシュがありましたが、大手小売店の中でもPB商品の売上構成比が高い企業は、NB商品が軒並み値上げされる中、価格据え置きにする事で多くの消費者の支持を得ています。

 

 

結果として、利益率の改善無くして時流の変化に合わせるための具体的な対策は考えられないという事になりますが、時代の変化に取り残されないようにする為には、常にこれらの事を意識する必要があります。

 

 

変化に対応できる柔軟な仕組み作りこそが、いつどの時代でも最強の戦略である事は変わりないのです。

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