楽天市場のスピード配送への取り組み

Date:2023.02.04
目次

※翌日配送ニーズの高さ
※楽天スピード配送の基準
※楽天スピード配送基準クリアのメリット
※どうやって対応するかを考える

2023年1月26日に楽天新春カンファレンスが開催されました。毎回、今後の方向性や戦略が発表されるこのイベント。今回も、店舗側の今後の販売戦略を左右する重要な発表がいくつかありました。

 

 

その中で筆者が注目した内容は、楽天市場の「スピード配送への取り組み」でした。購入した商品が翌日に届くサービスはネットショップを利用するユーザーの多くが求めており、Amazonの「プライム配送」や、Yahoo!ショッピングの「優良配送」など、土日祝日、長期休暇の間でも翌日配送に対応している店舗を選ぶ傾向が強まっており、ついに楽天市場も大々的に配送スピードの強化に注力していく事になりそうです。

 

 

すでに、注文の翌日に商品を届ける「あす楽」に関しては、ずいぶん前から提供されていますが、今回のスピード配送への取り組みは、さらに一段階、上を目指したサービスになります。既存の「あす楽」サービスと比較して、どのような違いがあるのか?そして、店舗側が取り組むべきことはどういった事なのか?について考えてみましょう。

 

 

 

※翌日配送ニーズの高さ

大手ECモールがこぞって翌日配送サービスを強化したがる理由は、そこに消費者の大きな需要があると言えます。誕生日や、父の日、母の日をはじめとする年間を通じてのイベントなど、特定の日に商品を届けて欲しいユーザーは少なからず存在しますが、多くのユーザーは自分が注文した商品を少しでも早く届けて欲しいと考えています。現在は商品ページにお届けまでの日数を表示させる事が一般的になりましたが、消費者アンケートの結果、お届けが早ければ早いほど転換率が高まり、一方、遅ければ遅いほど転換率が下がってしまうという傾向があるようです。また、配送スピードが早いだけでユーザー評価が高くなる傾向もあります。

 

 

自分が消費者としてネットショップで商品を購入する場合、早く届いてくれた方が嬉しいですし、急ぎの時には、多少値段が高かったとしても、早く届けてくれるお店で購入する場合もしばしばあります。時として、配送スピードは販売価格よりも優先されるサービスとして重視されるのです。

 

 

ユーザーニーズの変化について行けなければ消費者からソッポを向かれてしまう小売業の性質を考えると、何としてでも消費者のニーズが高いサービスは提供できるように体制を整えていく必要があります。

 

 

 

※楽天スピード配送の基準

楽天スピード配送が正式サービスとして開始されるのは、現在のところ2024年第二四半期頃の予定です。ちょうどその時期から楽天SKUプログロムが開始されるので、ユーザーの利便性が一気に改善する反面、店舗側はこれから1年程の期間に様々な準備を進める必要があります。

 

 

「楽天スピード配送」は、これまでの「あす楽」と基準が大きく異なります。まず、これまでのあす楽サービスは、当日の締切時間内(締切時間は店舗により異なる)に注文された商品は、その日のうちに出荷して翌日にお届けすればOKでした。なお、翌日に届けることができなければ、購入金額の5%を「お詫びポイント」としてユーザーへ付与する必要があります。(ポイントが店舗負担か、楽天負担かはその時の状況により異なりますが、原則、店舗側が負担しなければなりません)

 

 

原則、締切時間までの注文に対して当日出荷して翌日にお届けできれば問題なく、土日祝などの休日は利用条件で出荷対象外として営業日カレンダーに登録していれば、定休日の注文を翌日配送できなかったとしても、あす楽対象商品としてバッジを表示する事が可能です。しなしながら、楽天スピード配送対象商品として認定を受ける場合は、365日、常に翌日配送に対応する必要があります。土日祝も、年末年始、GW、お盆休みも関係なく、翌日配送に対応しなければなりません。例えるなら、Amazonに出店しているセラーが、自社出荷でPrimeマークを取得するのと同じ条件となるため、サービスレベルとして非常に高いものを求められ、店舗への負担は間違いなく大きくなると考えられます。

 

 

なお、楽天スピード配送に関する詳細は、楽天RUXで挿画で解説されていますので、そちらも併せてご確認頂くことをお勧めいたします。

 

 

 

※楽天スピード配送基準クリアのメリット

現状では明確なメリットは発表されていませんが、先にスピード配送に取り組んでいるAmazonとYahoo!ショッピングでのアドバンテージをもとにメリットを推測してみましょう!

 

 

・検索順位が上がる

スピード配送に対応している商品と、対応していない商品を比較すると、対応している商品を求めるユーザーの方が多い事は間違いありません。ユーザーが求めている商品が検索結果で上に出てくることでユーザーの利便性が大きく向上されるため、検索アルゴリズム(検索順位を決めるためのルール)に上位表示させるための加点要素として組み込まれる可能性が高いと考えられます。

 

 

・対象商品を簡単に表示できる

あらゆる検索方法に対して、スピード配送に対応している商品だけを簡単に絞り込める機能が導入されそうです。どれだけ細かな条件で商品を検索したとしても、簡単にスピード配送に対応した商品だけを絞り込むことができます。

 

 

・専用バッジの付与

商品ページに「スピード配送対象商品」の専用バッジが付与されることで、ユーザーに商品を選んでもらいやすくなります。AmazonのPrimeマーク、Yahoo!ショッピングの「優良配送マーク」と同じような効果が期待できます。

 

 

※どうやって対応するかを考える

ユーザーニーズがどれだけ高くても、いきなり365日、毎日出荷に対応することは容易なことではありません。新規スタッフの確保や雇用契約の見直し、場合によっては受注処理システムや運用フローの見直しをする必要があります。もちろん、すべての業務を社内で対応する、すべての商品をスピード配送に対応するとなると、ハードルが高すぎます。しかし、外部物流の活用や、特定商品に絞っての運用であれば、導入できる可能性が高くなります。

 

 

例えば、商品をRSL(楽天スーパーロジ)へ預け、そこから出荷してもらうとします。出荷指示を出さなければ商品は出荷されませんが、この業務を自動化できるOMS(オーダー・マネジメント・システム)を導入することで、お店が稼働していなくても自動的に注文処理を完了し、商品を出荷する事が可能です。新規スタッフを採用する事なく、雇用条件を見直すこともなくスピード配送サービスに対応できる方法は存在します。

 

 

さらに、スピード配送に対応する商品も対応可能な商品に絞り込むことで、店舗の負担は最小限に抑えることができます。例えば、お店の売上の大半を占める商品を外部物流を活用し、かつ、自動的に受注する仕組みを導入する事で、大きく売上が伸びるチャンスを掴むことができます。

 

 

原則、ユーザーニーズが高いサービスに関しては、導入する方向で検討しないと、必ずお店の成長は止まってしまいます、最初から無理だと思い込むのではなく、どうすれば対応できるかを考える習慣が身に付けば、競合他店との競争にも生き残っていけすはずです。

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