楽天市場の送料無料ライン統一化
2019年7月31日~8月3日の4日間、横浜で楽天OPTIMISMというイベントが開催されました。これまでの戦略共有会が中心の「新春カンファレンス」と、楽天の店舗がリアルショップを出店する「楽天うまいもの大会」をミックスしたような新しいタイプのイベントで、多くの人たちが来場しました。その楽天OPTIMISMに筆者も参加してきました。
今回、このイベントで発表された最も大きなニュースは、送料無料ラインの統一化です。楽天市場で販売されている3,980円以上の商品は、すべて送料無料となること。(2020年初頭より開始予定)送料は店舗側が負担することになることから、楽天市場へ出店する多くの店舗さんの間で物議を醸しています。3,980円という具体的な金額と、来年初頭という時期が発表されたことを背景に、今後、どのような展開になっていくかを占ってみましょう。
送料無料ラインの概要と統一化の背景
楽天市場が一定価格で送料無料ラインを統一化したいと考える背景には、「店舗毎に送料が異なるため分かりにくい」というユーザーのニーズがあります。ユーザーに対してより分かりやすく送料無料ラインを提示することによって、購入件数の増加を目指します。
開始時期は2020年2月~3月頃を予定しており、対象地域は離島、山間部を除く日本全域。160サイズを超える大型商品や、クール便で配送する商品などは送料無料対象外となります。なお、送料無料対象商品の配送に掛かる輸送費は原則として店舗負担となりますが、配送可能および不可地域に関しては今のところ制約がありませんので、日本全域と言えど、店舗毎に配送できる地域とできない地域は自由に設定できるものと考えられます。
送料無料ライン統一後に起こり得ること
送料無料ラインが統一されると、店舗側にはどのような動きが出てくるでしょうか?
まず最初に起こりうる事として、販売価格にそのまま送料を上乗せすることが考えられます。そうなると、商品を複数個数買おうとすうユーザーにとっては非常に割高感を感じるような売価設定になってしまいます。商品によっては楽天市場が一番高いモールになってしまうことが懸念されます。
一部店舗の間ではすでに導入されている手法ですが、まとめて購入する人に対してクーポンを配布して帳尻を合わせることも可能かもしれません。しかし、販売価格を統制しようと、どの店舗も同じ価格での販売を推奨しているメーカーの商品に関しては、取り扱う店舗によって(発送元の立地によって)送料が異なり、結果、価格の統制が難しくなるという問題が発生します。
さらに、送料を統一化することで送料以外に嵩む経費がでてくることも考えられます。それはピッキングコストです。発送業務を外注に委ねる場合など、商品一個あたりのピッキングコストが掛かる場合があります。例えば、398円の商品を10個で3,980円で販売し、かつ、1個のピッキングコストが50円だった場合、500円のコストが余分に掛かっています。1個で3,980円の商品を販売する店舗と比較すると、同じ価格だとしてもコストが嵩みます。1個あたりの単価が安ければ安いほど、コストが高くなる可能性があるとなると、単純に送料負担だけでは全て解決しないということも考慮しなければいけません。
二重価格に及ぼす影響
二重価格表示にする場合、送料を販売価格に上乗せすることで販売価格がこれまでより高くなってしまいます。しかしながら、定価(メーカー希望小売価格)が存在する商品は送料分を加味されて値付けされていないため、結果として定価に対する割引率は低くなってしまいます。この実質的な割引率の減少がユーザーにとってどのような影響を及ぼすかは実際に送料ラインが統一化されてみないと分かりませんが、割高感を感じる人も少なからずとも存在することは間違いないと言えるでしょう。
配送品質の向上でユーザーを満足させられるか?
Amazonへ出店している店舗の多くは販売価格に送料を上乗せすることでFBA倉庫から発送したり、マケプレプライム(自社出荷の翌日配送)に対応することでPrimeマークを付与して商品を販売しています。その理由はシンプルで、Primeマークが表示されている商品は検索結果上位に出やすい性質があるためです。Amazonでは送料を上乗せしたとしても検索上位に表示されれば購入してくれるユーザーがいるのは確かですが、それは、配送に対してAmazonが抜群の高い配送品質を誇っているからです。少々価格が高くても配送が速い商品を選ぶユーザーがいることは確かですが、そのためには楽天市場に出店している店舗全てが、Amazon並の優れた配送サービスを提供する必要があります。
その配送品質を保ち、ユーザーにいかに認知してもらえるか。。。送料ライン統一化を成功させるためには決して避けては通れない道のような気がします。
注文件数増加で売上げアップを狙う!?
送料無料ラインが3,980円に統一化されることで、客単価が高い店舗にとっては客単価の低下に繋がる可能性があります。客単価が低下したとしても売上を伸ばす方法としては、注文件数を増やすしかありません。注文件数が増加すると手間が掛かるようになりますが、配送プロセスや梱包パッケージの簡素化、ボリュームメリットを活かした仕入れ条件の優位化など、どこかでコストを吸収しながら効率よく作業を行うことを考えなければいけません。一説には送料無料ラインが統一化されることで30%以上の売上げアップが見込めるという試算もあるので、ここは悲観的に捉えず、売上げアップを目指すためのプロセスだと前向きに捉えて改善策を検討していきましょう。
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